世界遺産・厳島神社のすぐそばにある宮島水族館(みやじマリン)には、瀬戸内海に生息する特別な海の生き物が暮らしています。それが、イルカの仲間でありながら「背びれのないイルカ」と呼ばれるスナメリです。かつては宮島周辺の海でも身近な存在だったスナメリは、今や希少な動物となっています。ここでは、宮島水族館のシンボルにもなっているスナメリの、ユニークな生態と彼らを守るための水族館の役割をご紹介します。
※この記事に掲載している画像はイメージです。実際の団体、個人、店舗、商品などとは異なる場合があります。
1. スナメリの基本生態:背びれのないイルカの正体
スナメリ(砂滑)は、クジラやイルカと同じ「鯨類(げいるい)」に属しますが、他のイルカとは一線を画す特徴を持っています。
① 最大の特徴:背びれがない
スナメリの最大の特徴は、背びれがないことです。その代わりに、背中の中央から尾びれにかけて、低い盛り上がり(隆起)があり、そこに小さなイボ状の突起が並んでいることが知られています。この見た目から、英語では「Finless porpoise(背びれのないネズミイルカ)」と呼ばれます。
② 泳ぎ方と体色
- 泳ぎ方: 非常に静かに、水面をほとんど乱さずに浮上して呼吸します。ジャンプして全身を海面に出すことはめったにありません。
- 体色: 生まれたばかりの赤ちゃんは黒っぽい色をしていますが、成長すると全身が明るい灰色になります。
③ 主な生息地と食性
スナメリは回遊せず、水深50メートル以下の浅い沿岸域や内湾を好んで生息します。瀬戸内海はその代表的な生息地の一つです。食性は、アジやイワシなどの小型魚類、イカ、エビなどの底生生物(海底に生息する生き物)を食べます。
2. スナメリの不思議な行動:宮島水族館で観察できる「生態の謎」
宮島水族館では、スナメリの家族が展示されており、彼らのデリケートで興味深い行動を間近で観察することができます。
【宮島水族館で観察したいユニークな行動】
- 半分眠る「半球睡眠」スナメリは、水中で泳ぎながら眠ります。これは**「半球睡眠(はんきゅうすいみん)」**と呼ばれ、脳の半分ずつを交互に休ませることで、完全に眠ってしまうことなく、呼吸のために水面に上がったり、外敵を警戒したりすることができます。水槽で片目だけを閉じて泳いでいる姿が見られたら、それは彼らが休んでいるサインかもしれません。
- 体をすりつけあうコミュニケーションスナメリたちは、水槽の中で体を優しくすりつけあう行動を頻繁に見せます。これは親子の間でよく見られ、家族や仲間とのコミュニケーションをとっていると考えられています。
- エコロケーション(超音波)背びれのない丸い頭部から超音波を発し、その反響で餌を探したり、周囲の状況を把握したりします。濁った水の中でも、音を頼りに生活しているのです。
3. 宮島水族館が果たす「種の保全」の役割
かつて瀬戸内海に多数生息していたスナメリは、環境汚染、埋め立てによる生息地の減少、混獲(漁の網に意図せずかかってしまうこと)などにより数を減らし、現在では環境省のレッドリストで絶滅の恐れのある地域個体群に指定されています。
宮島水族館は、スナメリの貴重な生息域である瀬戸内海に位置する水族館として、種の保存に積極的に取り組んでいます。
【宮島水族館とスナメリファミリー】
宮島水族館は、スナメリの繁殖に成功し、複数のスナメリが暮らしています。
| スナメリファミリーの紹介(一例) |
| ハッチ(父親):水族館の繁殖活動を支える雄。 |
| コハル(母親):子育てに奮闘する母親スナメリ。 |
| チハル(姉):コハルの子で、母親や弟と仲良く泳ぐ姉スナメリ。 |
| ミハル(弟):2023年に生まれた赤ちゃんスナメリ(成長過程)。 |
水族館では、彼らの生態展示を通じて、スナメリが瀬戸内海の生態系の中で食物連鎖の頂点にいる重要な存在であること、そして彼らを守ることが海の環境を守ることにつながるというメッセージを伝えています。
まとめ
宮島水族館でスナメリに出会うことは、瀬戸内海の自然の豊かさと、現在その生態系が直面している課題を知るきっかけになります。
ガラス越しに見るスナメリの穏やかな姿や不思議な生態は、きっと忘れられない体験になるでしょう。彼らの命を守るための水族館の取り組みに想いを馳せながら、瀬戸内海の海の環境について考えてみましょう。



コメント